2022年9月28日昼 9月下旬秋晴れの今日は昆虫バカセにとって久しぶりの休日であり、東京近郊のタガメが広く浅く棲息している里を、今年もタガメは生き延びているのか?ウオッチングして巡りました。
まず 事前に衛星写真を調査して判明した、棲息環境として図鑑で紹介されていそうないかにもタガメが見つかりそうな睡蓮が生い茂る溜め池をウォッチングしました。
ここでちょっとしたハプニングが生じました。溜め池の脇に留めたマイカーの後ろに巡回中のパトカーが止まり、降車した警察官から「こんなところで何をしてるんですか?」とやや強い口調で職務質問されました。私は咄嗟に「昆虫バカセと申しまして、昆虫の写真を撮っています。」と答えると、警察官から「ほ~どんな昆虫ですか?」と問われ、「タガメです。」と答えると、「あの絶滅危惧種のタガメですか?」とさらに問われ、この後は、職務質問というよりタガメ談議がしばらく続きました。仕事熱心で昆虫にも興味をお持ちの警察官でした。違法な釣りや(ブラックバスなど)外来魚の放流を警戒されていたようです。つば付きの帽子を反対にかぶり長靴を履いてカメラを首にぶら下げ、片手に特性の網を持って池を覗いていれば、怪しまれても仕方がありません、どうもすみませんでした。
結局、やはりこの溜め池では、ウシガエルのオタマジャクシしか見つかりませんでした。獲物待ち伏せ型のタガメは、このような深さがある溜め池では、呼吸管が短いため水面すれすれで獲物を待ち伏せることしかできず、その胃袋を満たすほどの餌が確保できないため、棲めないのだと思います。
ふと、溜め池の脇に良い雰囲気のクヌギが目に入りました。
近寄って見ると、根本付近で幹が二股に分かれるところで動く黒い影の気配を感じ、さらに近づくとコクワガタの雄が見つかりました。
つぎは 棚田が広がる地域をウォッチングしました。ここには、田に水が満ち青い稲が茂る夏季であれば、タガメは確実に棲息していると思いますが、現在は稲刈りが済んだ後なので、彼らは活路を他に見出すべく移動したものと思います。
しばらく周囲を散策しましたが、タガメが潜んでいそうな水場は見つかりませんでした。それでも、心が洗われるような田舎の風景に癒やされました。棚田の横には彼岸花の群落が幾重にも広がっていました。
さいごは およそ10年前に訪れた(10年前にはタガメが複数匹確認できた)コンクリート製の用水路を訪れました。刈り取り直前の田んぼ(写真左側)と刈り取り直後の田んぼ(写真右側)に挾まれて両脇は雑草で覆われていました。
それでも この用水路を緩やかに流れる水は大変澄んでおり、上から眺めると自分の姿が鏡のように反射します。当初は、用水路の外からウォッチングしようと思いましたが、雑草の葉先と光の反射が邪魔で適いません。
昆虫バカセの両腕は負傷上がりで思うように動かないので迷いましたが、(救急車を要請することがないように)細心の注意を払いながら、用水路の中に入りました。(タガメをウォッチングし易いように)水を濁らせないように、下流側から上流側に向かって少しずつ歩みました。
まずは水草が生えている場所や水路の両縁、草溜まりをじっと目視(凝視)して、見つからなければ、それらの下や周囲に網を入れる方法をとりました。1網入れる毎に、ザリガニやスジエビ、ヒメゲンゴロウ、マメゲンゴロウが入りました。ドジョウは、この1回だけしか入りませんでした。
5回に1度ぐらいの網入れで、タイコウイチが見つかりました。
コウイムシも1度網に入りました。
このときは、タイコウウチも同時に入りました。10年前はここでタイコウチは見つからなかった記憶がありますが、今日はよく見つかります。
トウキョウダルマガエルもよく網に入りました。タガメの餌となる生き物がここでは豊富に棲息しています。
たまには 水棲昆虫ではなく、陸棲の昆虫;ナガコガネグモも入りました。
すると、目の前に大きな草溜まりが現われました。下流側から進んでいるので、目の前は丁度草溜まりの淀み(水流が特に弱い場所)になっており、「こんなところにタガメは居そうだよな~」と、凝視しました。
左の方で何か気配を感じます。
ゆっくり接近します。「あ いた、タガメだ!」
良かった!今年もタガメは生き延びていました。
田んぼの水が涸れ、越冬するまでの1ヶ月間 タガメは、餌が(思いの他)豊富で、水深が20cm以下程度と浅く、流れが弱く澄んだ水で満たされているこの用水路で命をつないでいるのだと思います。
一見して”それらしい”図鑑に載っているような溜め池ではなく、”こんなところに”と驚くようなコンクリート製の用水路でタガメは見つかります。”真実は図鑑より奇なり”です。
今年もタガメがここで生き延びていたことが嬉しい反面、今年は10年前と比較してドジョウが激減していると感じたこと、タイコウチは増え(合計5匹確認することができ)ましたが、10年前には多く見つかったミズカマキリやクロゲンゴロウ、シマゲンゴロウが見つからなかったことが気になります。これらのことは、どうか昆虫バカセの網入れ技術不足に因るものであって欲しいと願います。
このような自然に触れると癒やされます。現在の自然は維持したいと願ってやみません。
内容 | タガメの里・タガメの命つなぐ用水路 |
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Eメール | hydro-servo-k@ab.auone-net.jp |
作者 | 昆虫バカセ |
更新日 | 2022年10月1日 |