東京・多摩北部に位置する昆虫バカセフィ
ールドでは、夏になるとクヌギなどの樹液で、
クワガタやカブトムシが戦うシーンによく
遭遇します。
しかし不思議なことに、戦いは同種同士に
限られます。
強い子孫を残しそうとする、種の繁栄戦略
なのでしょうか。
ノコギリクワガタの戦い
① 雌をめぐる大きな雄同士の戦い
2023年7月4日20時頃、気温25℃、シラカシ
下から雄(体色が赤いので、以降は”アカ”と呼ぶ左側の個体)がペアに近づいてきて、すぐにペアの雄(体色が黒いので、以降は”クロ”と呼ぶ右側の個体)と戦いが始まりました。
”ガシャ、ガシャ”と一杯に広げあった大顎がぶつかり合い、迫力的でした。雌はぶつかり合う大顎の下で、のんきに樹液を吸っています!
勝負はつきません。シラカシの(見た目が)スベスベの木肌に対しても、両者共しっかり爪(符節)を効かせて後退しません。
さらに戦いはつづきました。
最後は何故か クロが彼女を置いて逃げてしまいました。(動画は途中端折っています。実際には中断を含めて2分ほど続きました。)
体格が同じぐらいなら、ノコギリクワガタの戦いも長丁場になるようです。
戦って 強い雄が雌と交尾し、より強い子孫を残そうとする、種(ノコギリクワガタ)の繁栄戦略なのでしょうか?
② 雌を守る大きな雄と小さな雄の戦い
2022年7月1日20時過ぎ、気温30℃、団地前のクヌギ
大型の雄で構成されたノコギリクワガタのペアに、別のやや小型のノコギリクワガタの雄が近づくと、「オレの女に手を出すな!」と言わんばかりに、大型のノコギリクワガタの雄が大顎を広げて一気に追い払いました。
体格差があるノコギリクワガタの戦いは、一方的なものになるようです。
③ 戦わずして勝つ威圧感漂う大きな雄
2023年7月4日20時頃、気温25℃、シラカシ
左側面-目線の樹液は 昆虫バカセも、思わず「うゎ~凄い」と声を上げてしまうほど、密集していました。今までは浸み出ていなかった場所です。
ノコギリクワガタの雄が4匹、コクワガタの雄が2匹、カナブンが1匹、モンスズメバチが1匹集まっていました。
この樹液が クワガタの個体数以上に迫力を感じさせる理由は、中央に”丹下左膳”のような風貌のノコギリクワガタがいるからだと、後で気が付きました。
凄い迫力です。体全体が薄汚れていて、左の触角がありません。昆虫バカセは何故か、”丹下左膳”を連想しました。
なんとなくここで見とれていると、丹下左膳に、左下方から 大きなノコギリクワガタ(挑戦者)が迫ってきました。
そして 戦いが始まるかと思い、動画(撮影)を回しました。
しかし 挑戦者は丹下左膳に 大顎を突き合わせた瞬間、きびすを返して後戻りしてしまいました。丹下左膳はその威圧感で、戦わずして勝利しました。
ノコギリクワガタの中には、とんな強者もいるもんだと 驚きました。
コクワガタの戦い
① 初夏 雨中の戦い
2023年5月29日19時40分頃、気温19.5℃、団地前のクヌギ
どしゃ降りの中、洞が開いたコブの中と上には、10匹前後のコクワガタが群れていました。
しばらく観察していると、小さな雄同士が決闘し始めました。すかさず片方がもう片方をはさみ持ち上げましたが、投げ落とそうとはせず、力の強さをアピールしているだけように見えました。
見方によっては”いじめ”のようにも見えました。クワガタの世界にも”いじめ”はあるのでしょうか?
② 夏 雌を守る大きな雄同士の戦い
2023年7月26日20時過ぎ、気温30℃、クヌギ林-クヌギの大木
昆虫シーズン真っ只中、昆虫バカセフィールドで集クワ力歴代No.3のクヌギ林のクヌギの大木を覗きました。今年は、今まで工事の影響で不調が続いていましたが、今夜は繁盛していました。
しばらく眺めていると 突如、コクワガタの大きな雄同士が戦いを始めました。そして、すぐさま片方がもう片方を挟み、投げ落としました。
よく見ると、勝利した雄は、雌を守っていたようでした。
いつも不思議に感じていることですが、このシーンにように、カブトムシやノコギリクワガタもいましたが、殆どの場合 他種間の戦いは生じません。
樹液は、餌を得る場所であると同時に あるいはそれ以上に、種の雄と雌が出会い交尾をし、子孫を次代に残す 社交の場である意味合いが強いため、より強い子孫を残そうとする種の繁栄戦略に関する遺伝子が、同種の雄同士を戦いに導いているように思えます。
③ 秋 雌を奪う戦い
2023年9月11日19時45分、気温26.7℃、団地前のクヌギ
目線より1mほど上の樹液では、コクワガタの比較的大きな雄と2匹の雌、少し離れてやや小さな雄がいました。
その下 目線の位置にある樹液では、コクワガタのかなり大きな雄と雌、小さな雄がいました。
しばらく眺めていると、下の樹液の大きな雄が、上の樹液に向かって這い上がって行きました。「これは戦いになるかな?」と思い、ビデオを回しました。
<ラウンド1>
下から上がってきた雄(侵入者)は最初、 上の雄の横をスルーしてフリーの雌に近づきましたが、その雌を気に入らなかったのか、改めて(別の雌と一緒にいた上の)雄の方へ向かって方向転換したとたん、やはり戦いが始まりました。
<ラウンド2>
上の雄は下手、侵入者は上手で組み合ったまま、一進一退の攻防がつづきました。
<ラウンド3>
侵入者は、体を右周りに回転させて上側になり、素早い動きで上の雄の下に大顎を入れ、すくい投げで上の雄を投げ落しました。そして、上の雄の彼女を奪いました。
コクワガタ同士の戦いは長丁場になる場合が多く、今年5月(丁度 大相撲5月場所が開催されている時)の大一番につづいて、今回も(丁度 大相撲秋場所が開催されている時に)より重量級の大一番が見られました。
コクワガタは 比較的体が小さく地味な印象ですが、クワガタムシの中では、意外にも最も激しく長く戦います。個体数が多く、5月初旬頃~9月末頃にかけて、多くの樹液で激しい戦いが繰り広げられます。
ヒラタクワガタの戦い
赤い雌をめぐる赤い雄と黒い雄の戦い
2023年6月14日20時30分頃、気温20℃、
クワガタ達の断末魔のオアシス-No.5のクヌギ
体長36mmぐらいの体色が黒いヒラタクワガタ雄(以降 ”クロ” )がいました。
すぐ近くには、体長28~30mmぐらいの体色が異常に赤いヒラタクワガタの雌もいました。
樹皮下に入り込んだ雌を、”クロ”がすごく気にしています。
さらにこの直後、この雄(与党の雄)の右(に60度ぐらいずれた)側面に 別のヒラタクワガタの雄が現われました。もともと いたのだと思いますが、今 気が付きました。
この雄も体色が赤みがかっていました(以降はこの雄を”アカ”と呼びます)。体長は、最初の雄と同じぐらい(か、やや大きい)36mm程度。
すると ”アカ”は、下に降りながら左に40度ぐらい移動し、姫君の近くにいる”クロ”の下30cm程度まで接近しました。
さらに、”アカ”は向きを変え ”クロ”の直下15cmまで迫りました。
昆虫バカセは直感で、 ”これは決闘が始まると思い” ここから動画を回しました。つぎの動画はヒラタクワガタ雄 "クロ" Vs "アカ”の決闘 その一部始終です。
決着は意外にもすぐ決しました。下から攻め寄った”アカ”が 上で待ち構える”クロ”の大顎を上外側からはさみ 持ち上げ、プロレスの大技”ブレーンバスター”で地面にたたき落としました。
それにしても、ヒラタクワガタとは(この辺では)1匹と遭遇するだけでも幸運なのに、まさか 戦いの場面に遭遇できるとは、全く予想していませんでした。
今夜は梅雨明け(6月8日)後1週間ぐらいが経過した、ヒラタクワガタが樹上で活動する黄金期です。ヒラタクワガタ同士の戦いが見られるのは、この時期をおいて他には無いと思います。
カブトムシの戦い
① 豪快な投げ技を披露
2023年7月26日19時40分頃、気温30℃、暗い雑木林のクヌギ
お目当てのクヌギでは、いつも賑わっていた正面は閑散としていましたが、右横の根元にカブトムシが群れていました。
左側では 体格が良い雄同士が戦っていて、角がぶつかり合う”ガシッ”という音が心地よいです。
左上の雄は 低い臨戦体勢からして”やる気満々”で、下から攻め上がってきた雄を一瞬で大きく弧を描くように投げ飛ばす様子を見て、思わず(心で)拍手しました。
② 雌同士も戦う
2023年7月31日19時40分、気温29.2℃、
クワガタ達の断末魔のオアシス-No.4のコナラ
No.4のコナラでは、前回に続いて(前回にも増して)、「ぅわ~」と歓声を上げてしまうほど、カブトムシとノコギリクワガタが群がっていました。
中央では、一際大きなカブトムシの雌が幅を効かせていました。一回り小さい普通サイズの雌を、頭でぐいぐい押し込んでいました。
しかし この大きな雌は、過去遭遇した個体の中で間違いなく最大だと思われ、心残りは、体長を確認(計測)しなかったことです。70mmは優に超えていそうです。
このような自然に触れると癒やされます。現在の自然は維持したいと願ってやみません。
内容 | 東京・昆虫ウォッチング クワガタ 種の繁栄をかけた戦い |
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Eメール | hydro-servo-k@ab.auone-net.jp |
作者 | 昆虫バカセ |
更新日 | 2023年10月25日 |