サーボの背景技術① ブロック線図の作成2
静特性と動特性を抽出する方法2
微分方程式を基に誘導する方法(ex.1次遅れ要素(1次系))

 サーボ技術は自動制御技術を意味するだけではなく、機械、電気、制御を含めたシステム全体を静的にのみならず、動的に捉える(理解する)技術を意味します。
 ここでは抵抗-インダクタンス回路を例に、微分方程式を基にブロック線図の作り方を説明し、ブロック線図から静特性と動特性である1次遅れ要素を抽出する方法を説明します。

 抵抗-インダクタンス回路を例にとります(図111)。

図111_抵抗-インダクタンス回路 サーボバカセ河野泰幸

 スイッチをONさせると、電流が流れます。このことに関して微分方程式を立てます(式111)。

サーボ職人河野泰幸 式111_抵抗-インダクタンス回路の微分方程式

 入力を電圧E、出力を電流Iとして、式111をIに関して時系列で最も先行するIの微分値dI/dtで整理します(式112)。

サーボ職人河野泰幸 式112_抵抗-インダクタンス回路の微分方程式-置き換え

 式111をブロック線図で示します。そのまま置き換えるだけです(図112)。

図112_抵抗-インダクタンス回路のブロック線図-途中 サーボバカセ河野泰幸

 なお、dI/dtを積分するとIになります。このことをブロック線図で示します(図113)。
 ここで時間積分は、ラプラス演算子Sの逆数1/Sで表示します。

図113_電流の微分値から積分を介して電流に変換 サーボバカセ河野泰幸

 図112と図113を組み合わせると、ブロック線図が完成します(図114)。

図114_抵抗-インダクタンス回路のブロック線図-完成 サーボバカセ河野泰幸

 図114を伝達関数で表現します。そのまま変換するだけです(式113)。

サーボ職人河野泰幸 式113_抵抗-インダクタンス回路の伝達関数-途中

 式113をIに関してE/Rを使用して整理し、変換します(式114)。

サーボ職人河野泰幸 式114_抵抗-インダクタンス回路の伝達関数-完成-静特性と動特性を分離

 式114において、右辺の左側E/Rは静特性、右側の点線で囲った部分は動特性を示します。

 式114の右辺の動特性に関して、L/RをTとし、式114を置き換えます(式115)。

サーボ職人河野泰幸 式115_抵抗-インダクタンス回路の伝達関数-完成-動特性を1次遅れ要素(時定数T)に変換

 式115において、右辺の右側の点線で囲った部分は、時定数をT(s)とした1次遅れ要素です。
 なお この1次遅れ要素は、ローパスフィルターとしても使用されます。この作用に関しては次項(動特性が有す周波数特性)で説明します。

 1次遅れ要素の時定数Tを式116に示します。時定数Tが意味する特性、応用途は次項で説明します。

サーボ職人河野泰幸 式116_抵抗-インダクタンス回路の1次遅れ要素時定数Tを示す数式

 式115右辺の右側1次遅れ要素をローパスフィルターとした場合のカットオフ周波数fを式117に示します。カットオフ周波数fが意味する特性、応用途は次項で説明します。

サーボ職人河野泰幸 式117_抵抗-インダクタンス回路から抽出されるローパスフィルターのカットオフ周波数を示す数式

 改めて、動特性であるローパスフィルターの伝達関数だけを取り出して、入力Xからローパスフィルタ-を介して出力Yを応答させます(図115)。

図115_ローパスフィルターの伝達関数 サーボバカセ河野泰幸

 これを数式に分解します(式118)。

サーボ職人河野泰幸 式118_ローパスフィルターの伝達関数を数式に分解

 出力Yに関して、時系列で最も先行する(Yの微分)YSで整理します。(式119)。

サーボ職人河野泰幸 式119_ローパスフィルターの伝達関数を数式に分解-YTSで整理

 式119の下側の式から、ローパスフィルターのブロック線図を描きます(図116)。この形は、具体的にローパスフィルターを計算する(プログラム言語で記述する)場合に適用できます。

図116_ローパスフィルターのブロック線図 サーボバカセ河野泰幸
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内容 サーボの背景①
ブロック線図の作成、静特性と動特性を抽出する方法2
微分方程式を基に誘導する方法(1次遅れ要素(1次系))
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作者 サーボバカセ
更新日 2022年5月1日